応用言語学研究
「応用言語学研究」は、第二言語習得論、第二言語評価論、第二言語語用論、第二言語心理学研究、第二言語テクスト分析などの観点から母語以外の言語を研究し、学習、教育、分析のための学術的基盤を構築する科目です。
第二言語習得論では、学習者がどのように第二言語を習得するのか、その理論と実践を理解します。第二言語評価論では、言語教育という枠の中で言語運用能力とは何かの理解から始め、教育現場での教育内容や教育活動を踏まえた上で、言語運用能力を定義し、測定して評価に反映させる方法を学びます。第二言語語用論では、実際に第二言語を使用する際のいつ、誰に、どのような事柄を、どのように話すべきなのかといった言語・表現の選択に関わる知識・規範を第二言語学習者はいつどのように学ぶのか、そしてそうした第二言語使用に関する知識・規範をどのように研究し、教育し、また測定できるのかを考察します。第二言語心理学研究は、動機づけを中心に、第二言語学習時における心理的要因に焦点を置いて、理論と実践を包括的に学ぶことを目的とします。第二言語テクスト分析では、テクスト言語学を例に、応用言語学分野の基本的概念、方法論を知り、それにのっとった問題の発見、データ収集、分析方法を習得します。
第二言語研究法
「第二言語研究法」では、量的研究法と質的研究法の両面からデータの収集・分析法に習熟し、分析結果から研究デザインや論文執筆へ導く方法を学びます。
量的研究法では、量的研究の研究デザインと統計的な概念の理解を含めた統計手法を学習します。統計手法については、記述統計・信頼性係数・相関・重回帰分析、分散分析の基礎的な知識と原理を中心として、応用的な多変量分析の基本までを学びます。更に、実際のデータを使用し、統計アプリケーションを用いて分析を行います。教育現場でのデータ収集を念頭に、研究デザイン、研究課題、研究方法を考え、応用することを到達目標とします。
質的研究法では、行為主体性 (agency) を持った人による行為としての第二言語の学習、教育、そして実際の使用に関して、どのような事柄を明らかにすることで、どういった教育的あるいは社会的還元が可能となるのかを考察します。人の営みを明らかにすることを狙いとした諸理論と各理論を下敷きにした研究法(例えば、エスノメソドロジー的会話分析やライフストーリーなど)を学び、受講生が興味・関心のあるテーマについて研究プロジェクトを体系的にデザインし遂行できるようになることを到達目標とします。
第二言語教育方法論
「第二言語教育方法論」は、第二言語運用の諸技能を、理論と実践の両面から研究し、より高度な習得・教育方法を考究する授業であり、リーディング、ライティング、リスニング・スピーキングを扱います。
リーディングでは、テクストの読みのプロセスを学ぶと同時に、外国語の学習、教育において読みがどのように位置づけられているのか考察します。さらに、言語教育や言語習得における理論を援用しながら、教材分析をとおして、読みの教育方法を開発する能力を養うことを目標とします。外国語教育や国語教育、言語習得における理論や知見、さらには教材分析をとおして、読みの教育方法を開発する能力を養うことを目標とします。ライティングでは、ディスコースジャンルの意識と、ジャンル特有のレトリックなどについての理論的な考察をベースに、自らのライティング実践を通して教室等での教育法と教育的適用を考察します。リスニング・スピーキングでは学習者はどのようにリスニング・スピーキングを習得するのか、理論と実践の両面を研究します。先行研究を踏まえて、第二言語の理解や発話メカニズムを検討し、リスニング・スピーキングのための指導法を考察し、教室での応用を考えます。
第二言語教育実践研究
「第二言語教育実践研究」は、カリキュラム開発、教材開発、教育メディア論、授業研究、第二言語教授法など、第二言語教育の実践を多面的に考える授業であり、併せて先端的なテクノロジーやメソドロジーを駆使した教育メディア論や教材開発を考究します。
カリキュラム開発では、ニーズ分析や状況分析に基づく学習到達目標の設定から、言語習得・学習理論を考慮したカリキュラムデザインや到達目標達成の評価までを包括的に学習し、具体的な状況に応じたカリキュラム開発について考察します。教材開発では、母語以外の言語を学ぶ際に、教育施設またはそれ以外で自律的に学習を行うためのリソースについて、従来の教材開発の省察を通し、人的・社会的・物理的な面からそのデザインを検討して新たなリソースの開発を試みます。教育メディア論では、日々進歩する情報コミュニケーション技術(ICT)を言語教育・言語学習に活用するための基礎知識を身につけ,これからの教育現場でのICT支援のあり方を考察します。
授業研究では、第二言語教育について、Reflective Practice の理念による省察等を含め、具体的な授業実践のあり方について学ぶとともに、その理論的基盤について考察します。また、第二言語教授法では、Audio-Lingual Approach 等の伝統的な教授法から CLIL (Content and Language Integrated Learning) など近年の教授法まで、第二言語教授法の理論と実践について学びます。
第二言語社会・文化研究
「第二言語社会・文化研究」では、言語と文化と社会と自己の相関について理論的に考究するともに、そうして得られた視座の下、多言語多文化現象、複言語主義、トランスランゲージング、言語政策等についてクリティカルに検討します。言語を即物的に捉えて単にスキルとして教育するのではなく、文化や社会の構成や自己の構築との関係への深い洞察を基盤として言語教育や言語政策を批判的に検討し、新たな言語教育や多言語状況での教育を構想し実践することができる高度な複眼的視点を養成することを到達目標とします。