ご挨拶・概要・沿革

ご挨拶

本専攻のルーツは、大阪大学言語文化部を基盤として平成元(1989)年4月に発足した言語文化研究科に遡ります。言語文化研究科はこの分野における全国最初の大学院独立研究科でした。情報工学の専門家を教授陣に加え、当時ではまだ珍しかった文理融合を視野に入れた大学院としてスタートしたのです。その後、平成17(2005)年4月には、言語文化部を解消して大規模な再編拡充を行い、さらに平成19(2007)年10月、大阪大学と大阪外国語大学との統合を機に、大阪外国語大学の大学院を含む新たな編成による言語文化研究科のもと、「言語文化専攻」として位置づけられました。

令和3(2021)年4月には、当時協議が始まっていた文学研究科と言語文化研究科の統合を視野に入れつつ、言語文化専攻は先んじて講座再編を行いました。分野I「超領域文化論講座/表象文化論講座」、分野II「コミュニケーション論講座/第二言語教育学講座」、分野III「理論言語学・デジタルヒューマニティーズ講座/言語認知科学講座」、という構成に組み変えるとともに、授業科目も一新して本専攻の特色をより明確に打ち出すことができる体制になりました。

令和4(2022) 年4月に人文学研究科が設置され、本専攻は「言語文化学専攻」と名称が変わりましたが、6講座から成る体制はそのまま保持されています。伝統的なディシプリンにとらわれず、分野の壁を越えて連携しながら、新たな人文学の研究領域や方法論を探究しています。本専攻が長年培ってきたこうした超領域的で独創的な人文学へのアプローチは、人文学研究科に新たに設置された「人文学林」の精神そのものであり、特にデジタルヒューマニティーズは、理系分野との連携も可能にする人文学研究科の重要な核となる分野として、今後一層重要な役割を担うことになるでしょう。

教育においても本専攻は分野の枠にとらわれない開かれた環境を提供しています。人文学の研究者として最低限必要な研究方法と発信力を養い、研究倫理について学ぶ科目を共通科目として前期課程の必修とする一方、専門科目の履修では講座や分野による制約を一切設けることなく幅広い知見を自由に養えるように指導しています。指導方法としては、各学生の研究テーマに合わせて指導教員2名を配置するとともに、必要であれば、専攻のどの教員からもアドバイスを得ることが可能な集団指導体制をとっています。

2030年を達成年限として国連が掲げたSDGs(Sustainable Development Goals)の精神は「誰一人取り残さない」ということです。17の目標の多くは、一見科学技術の開発や環境改善対策の貢献が期待されるもののように見えますが、それだけにとどまりません。世界には多種多様な文化・言語が網の目のように存在しており、あらゆる人の営みはこれらの文化・言語に根差しているのです。したがって世界各地で生じるさまざまな問題を誰一人とり残さず解決するには、根底に言語・文化に関する知、人文学の貢献がなくてはならないと考えます。とりわけ、SDGsの第3の目標「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する」あるいは、第10の目標 「国内及び各国家間の不平等を是正する」を達成するには、異なる文化・言語に関する深い知識と理解が必須であることは明らかです。言語文化学専攻では、言語・文化における個々の研究領域に閉じこもるのではなく、横断的・超領域的に教育研究を行うことによって、異なる言語・文化の理解を深めていきます。また、デジタルヒューマニティーズのような文理融合の分野、さらにことばを「人間の心」を反映するものとしてとらえる言語研究の成果に基づく外国語教育などの応用分野においては、伝統的方法論にとらわれない新たな研究・教育の地平を切り拓きます。

グローバル化と多様化が進む現代社会においては、人文学の基礎研究から得られる新たな知見を備え、それをさまざまな分野に応用し、時代とともに変遷する問題の解決に柔軟に対応できる研究者、高度専門職業人が必要です。言語文化学専攻は、本専攻のディプロマ・ポリシーの理念に沿って、そのような人材を養成する教育を提供します。

2023年4月

言語文化学専攻長

山本佳樹

人文学研究科言語文化学専攻の概要

人文学研究科言語文化学専攻は、超領域文化論講座、表象文化論講座、コミュニケーション論講座、第二言語教育学講座、理論言語学・デジタルヒューマニティーズ講座、言語認知科学講座の6講座からなっています。

本専攻では、国際社会を構成する諸地域・諸国民の伝統や文化の相互接触や変容、これらの伝統や文化間の相違をこえて有効なコミュニケーションを成立させる言語や記号のメカニズムの解析、その運用と基礎的な言語理論の開発、自然言語の機械処理やその基礎となる数理モデルや文法理論を中心とした言語工学的な情報処理、国際的な情報社会における言語文化情報の活用能力の開発などの研究と教育にあたっています。またそのことによって、旧来の伝統的な枠組みを脱却した、言語を中心とする新しい学問領域での教育と研究の方法の確立と、指導者養成を目指しています。

本専攻は入学者の出身学部等の如何を問わず、国際コミュニケーション社会において必要とされる言語と文化に関する高度の教養、ならびに情報活用能力を十分に発揮できる人材の育成を目的としています。そのため、入学者は出身学部等における自己の専攻を基礎としながらも、この趣旨を十分にふまえて履修すべき授業料目を選択し、特定の研究領域にのみ偏ることがないようにしなければなりません。一応の目安として、以下の3通りの標準的履修分野を想定し、研究指導を行うこととしています。
  • 分野1
    超領域文化論および表象文化論を中心に履修します。
  • 分野2
    コミュニケーション論および第二言語教育学を中心に履修します。
  • 分野3
    理論言語学・デジタルヒューマニティーズおよび言語認知科学を中心に履修します。
言語文化学専攻 概要

沿革

言語文化研究科は、平成元 (1989) 年 4 月大阪大学言語文化部を基礎として言語文化学 1 専攻の修士課程で発足し、その後、学年進行にともない、平成 3 (1991) 年 4 月に博士課程が設置されました。人文科学・社会科学・自然科学のいずれの分野からでも人材を受け入れ、それぞれの専門を基礎としながら、国際化・情報化社会の発展を推進していくことのできる、学際的な研究・教育の体系を築くことを目的としました。この分野の研究科としては全国で初めての大学院独立研究科でした。

平成 3 (1991) 年には教員・学生をメンバーとする大阪大学言語文化学会が結成され、平成 4 (1992) 年 3 月より学会誌の刊行が開始されました。そして、平成 6 (1994) 年 3 月、本研究科は新研究科棟の完成とともに、博士課程第1期生を送り出しました。平成12(2000)年からは共同研究プロジェクトが始まり、院生をもまじえた活発な共同研究が継続されて毎年10を越えるプロジェクトの研究報告が刊行されています。

平成17(2005)年4月には、研究科発足当時からの念願であった再編拡充が言語文化部の発展的解消により実現し、新設2講座を含む7基幹講座の体制で再出発することになりました。
平成19(2007)年10月には、大阪大学と大阪外国語大学との統合に伴い、言語文化研究科は「言語文化学専攻」を「言語文化専攻」と名称変更し、講座再編をおこなうとともに、「言語社会専攻」を新設して、2専攻となりました。
令和3年(2021)年4月には、言語文化専攻の講座再編を行いました。

令和4年(2022)年4月に、文学研究科との統合に伴い、言語文化研究科は「人文学研究科」として生まれ変わり、本専攻は再び「言語文化学専攻」に名称を変えました。
言語文化学専攻 沿革